2017.6.10 会社設立のメリット、デメリット 個人事業と法人の税金の違い①②③
個人事業主と法人の税金の違いとメリット、デメリットについて3回にわたり紹介します。
法人化する時は、しっかりメリット、デメリットを踏まえて慎重にしなければ損をしてしまいます。
まずは、メリット、デメリットの前に法人化した場合に税務署に提出しなければならない書類を上げていきます。
会社設立時税務署に提出が必要な届出書
・法人設立届出書
・法人→設立後(設立登記日)以後2か月以内
・個人→開業後1か月以内
・青色申告の承認申請書
・法人→設立第1期目から承認を受けようとする場合、設立の日の3か月、経過日の前日まで。
ただしそれより前に設立第1期の末日を迎える場合には、第1期終了の日の前日まで。
・個人→開業日から2か月以内、または、1/16~3/15までに提出すればその年から青色申告ができる。
・給与支払事務所等の開設、移転・廃止の届出書
・法人、個人→開設・移転又は廃止の事実があった日から1か月以内に提出。
・源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書
源泉徴収した所得税を年2回の納税に出来る。
1月~6月分を7月10日までに、7月~12月分を1月20日までに納付。※(従業員10人未満の場合に適用)
申請しないと毎月給与支払いの翌月10日までに納付しなくてはいけない。
・法人、個人→提出した翌月から適用。
- ただし、2回連続で支払いをしなかった場合には取り消しがされる。
・棚卸資産の評価方法の届出書(任意)
棚卸資産の評価方法のうち自社がどの方法で評価するかを届出る。
届出をしなかったら最終仕入原価法で評価することになる。
だいたい、最終仕入原価法でよい。
※棚卸が多ければ利益はあがる。
・法人→ 設立から2か月以内。変更する年度の開始日の前日まで。
・個人→ 変更しようとする年の確定申告時期まで。
- 変更をしたら2回連続適用をしなければいけない。
・減価償却資産の償却方法の届出書(任意)
法人の場合は、パソコンなど器具備品については定率法、ソフトウェア、建物は定額法で計算するようになっている。
個人は全て定額法になる。
その償却方法を変更する場合に届出を出す必要がある。
・法人→新たに償却方法を採用しようとする事業年度開始日の前日まで提出
・個人→変更しようとする年の確定申告時期まで提出
次回は個人、法人の違いとメリットについての紹介を致します。
前回は法人設立に伴い、税務署に提出が必要な書類を紹介しました。
今回は、会社設立のメリットと個人事業主との違いについて紹介したいと思います。
会社設立のメリット
法人にするとまず、取引先や仕入れ先から信頼を得やすくなります。
個人事業とは取引をしないという会社はまだまだ存在し取引先の幅も広がります。
また、求人の面からみても法人の方が安心感を与える事が出来る為、求人の数が増えて優秀な人材も集まりやすくなります。
銀行からの借入も個人事業よりも法人の方がしやすくなります。
このように信頼の面からみると法人の方が個人事業主よりもメリットが多くなります。
次に経営の面から見てみます。
個人事業の場合は1月~12月が事業年度と決められていますが法人の場合は自由に決める事が可能になります。
売上が極端に多い月があるような事業の場合は、その月を事業年度の最初にくるように決算日を決める事で、計画的に経営が出来るようになり節税対策をよりしやすくなります。
経営のリスクの面から見てみると、個人事業の場合は税金の滞納や借入金、仕入先の未払いなど最後まで自腹を切ってでも返済しなければいけませんが、法人は出資の範囲での有限責任となりますので出資した範囲でのみ返済義務があります。
その他のメリットとしては、会社の場合は相続税がかからないという事があります。
個人事業の場合、経営者が死亡すると全ての財産が相続の対象になりますが会社の場合会社の所有財産には相続税がかかりません。
会社と個人事業では節税の面でかなり違いがあります。これはかなりのメリットいえます。
そこで次は、節税の面でのメリットを詳しく紹介していきます。
法人は、給与所得控除ができる
給与所得控除とは、個人は事業で得られた売上から必要経費を差し引いた残りが所得になり所得税、住民税が課せられます。
会社を作って社長になると事業で得られた売上は会社の売上になりその売上から役員報酬として毎月一定額を受け取る。
役員報酬のみが社長の所得になり税金が課せられるようになります。給与所得控除は、会社から給料をもらうサラリ-マンにも、収入によって一定の割合を必要経費として控除する制度です。
役員報酬は自由に決められません。原則的に会計年度の初めの方に事前に金額を決定しなければいけません。
事業年度開始後の3か月以内。会計期間の途中で役員報酬を上げ下げすると利益操作と見られるので注意が必要です。
配偶者控除、配偶者特別控除がある
配偶者控除とは納税者と生計を同じにしていて、収入が103万円以下の配偶者や扶養家族がいる人が38万の控除が受けられる制度です。
配偶者特別控除とは配偶者に38万円を超える所得がある為に配偶者控除が受けられない時、一定の金額の所得控除が受けられる制度です。
※H30年分からは150万円以下に改正
配偶者特別控除が受けられる要件をあげてみます。
・控除を受ける人のその年における合計所得が1千万円以下であること
・民法の規定による配偶者であること。(内縁関係の人は該当しない)
・控除を受ける人と生計を一にしている事。
・年間の合計所得金額が、38万円超76万円未満であること
個人事業主は、年に1度でも配偶者や扶養者に給料を支払うと配偶者控除、配偶者特別控除が受けられなくなります。
家族に給料を支払う時は、青色専従者給与に関する届出書を提出する必要があります。提出しないと経費に認められません。
消費税について
個人事業も法人も設立・開業した初めの2年間は免税になります。
また、個人事業は、その年の前々年、会社は、その事業年度の前々年度の課税売上高が1000万円以下だった場合納税義務は免除されます。
(資本金1000万円を超える会社は除く)
個人事業開業年に、1000万円の売上で課税業者になったタイミングで法人成りをすれば4年間免税業者でいられる事になります。
しかし、前年の上半期の売上高または給与支払い額が1000万円を超えてしまった場合には2年目からは消費税を納めなくてはいけなくなりますので注意が必要です。
青色欠損控除がある(法人と個人事業では年数が違う)
青色欠損控除とは青色申告書の承認申請書を出している事を前提とし、青色申告をしている事業者が赤字となった場合、その赤字分を翌年度以降に持ち越して黒字だった決算期に相殺できる制度です。
法人では9年、個人では3年繰り越す事ができます。
※平成30年4月以後に開始する事業年度からは10年となります
不動産売買時は、会社の方がトク
事業用の土地や建物を売買する時に、個人事業主は、譲渡所得として申告しなくてはいけません。
このように法人にすると信用の面、経営のリスク、節税に対するメリットが多くあります。
また、法人を設立するとなると設立費用は約30万かかってしまいます。その為、簡単に投げ出す事ができません。
幾度となく苦難を超える必要があり事業に成功する覚悟が生まれるというメリットもあります。
しかし、これまであげてきたようにいい事ばかりではありません。いい事もあれば悪い事ありデメリットも存在します。
次回は、法人設立のデメリットについて紹介したいと思います。
これまでに、会社設立時に必要な提出書類、会社設立のメリット、個人事業主との違いをあげていきました。
最後に、会社設立時のデメリットを紹介したいと思います。
会社設立のデメリット
- ①赤字でも支払わなければならない税金がある
法人化すると、毎年税務申告を行う際に、たとえ赤字であっても支払わなければならない税金があります。
法人住民税の均等割りがあります。
②社会保険への加入が義務つけられている
個人事業主は、労働者が5人以上は適応対象で、5人未満の場合は任意です。
ただし、一部のサ-ビス業(旅館、飲食、理美容業、税理士事務所、弁護士事務所など)は、5人以上でも任意となります。
法人化すると、健康保険と厚生年金保険への加入が義務になります。
その際の保険料が国民健康保険と国民年金に比べて高額になります。
金額は給与額に応じて決まりますが、ほぼ給与額に比例します。
この保険料は会社と本人が折半する形になります。
会社の負担としては、従業員が増えれば増える程大きくなってきます。
社会保険加入時に必要な提出書類をあげていきます。
・健康保険・厚生年金保険新規適用届
→新規に健康保険・厚生年金に加入するときに必要です。
・健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届出
→社会保険加入者(被保険者)の資格届の為に必要です。
・健康保険被扶養者(異動)届
→家族を扶養者にする時や変更するときに必要です。
提出期限
→社会保険加入義務の事実発生から5日以内に提出しなければいけません。
③交際費が全額経費にならない
個人事業主は、全額経費になります。
法人は、800万円までしか経費になりません。
- ④事務負担の増加
会計処理及び法人税申告
→会計処理は会社法に則った形で処理を行う必要があります。
個人は、確定申告だけで大丈夫ですが会社は年末調整、法人税の申告をしなければいけません。
社会保険や労働保険の手続きもしなくてはいけません。
⑤事業の廃止に費用がかかる
個人事業主は、届出だけになります。
法人は、事業廃止には費用がかかります。
最後に、個人事業主、法人の違いについて紹介していきました。
それぞれにメリット、デメリットが存在します。
上記を踏まえ法人化するタイミングを見計らっていかなければ税金の面で損をしてしまいます。
損をしない為にも売上が上がるからとか従業員を増やしたいからとかなどの安易な考えで法人化をしないようにしなければいけません。
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